ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) MONTHLY REPORT 2013.03

3月。
東北東海岸を巡るツアー、その名も「CAN'T STOP TALKING TOUR」が近づいています。宮古、大船渡、石巻。ずっとそこで音楽を鳴らす時を考えていた。
あの日から、ずっと。アルバム「TOTAL」もそういう想いで書かれたと言っても過言じゃない。本来姿を持たない、透明な言葉しか持っていない俺が、その
言葉で何が出来るのか。何を残せるのか。気負いももちろんあります。でも、いつも自分等が全国各地でやってきた事をやらせていただきます。何故なら、
それらはそこで鳴らすために続けてきた事だからです。大切な季節、言葉を越えた所で、言葉にならない所で、人々の心、気持ち、魂、想い、記憶が深く
深く繋がり合っている街。遠く札幌からやって来た俺等の音楽を楽しむという事自体、簡単とは思ってはいませんが、集まれたなら、ここは、楽しみましょう。



1月末に行なわれたレコーディングの詳細を発表する時が来ました。今回は言わずと知れた横浜から世界へ音を届けまくってるレゲエの王MIGHTY CROWNの
BOSS、MASTA SIMONの招きで、彼等の監修するコンピレーション「LIFESTYLE RECORDS COMPILATION VOL.5」に収録される1曲を録ったのです!
しかもそこにはもう1人MCが呼ばれてました。その名は〜、言わずと知れたSHINGO★西成!これは中々ない顔合わせっしょ?SHINGOはもうずっと前から
俺自身、彼の音楽には触れててさ、毎回力もらったり、これで良いんだって自分の道を勇気付けられたりしてきたんだ。きっとそれは俺だけじゃないはずだ。
マジで。1度リキッドルームで同じステージ分け合って、終わって結構呑んでって感じで、リンクはがっちり出来てた。その後もずっと絶え間なく続いていた
SHINGOの仕事っぷりを遠く札幌から観て聴いてて、俺は、誰が俺とSHINGOを同じ曲中に組み合わせてくるのかってさ、ずっと楽しみにしてた。でもそれが
まさかSIMONとは思わなかった。流石の目の付けどころ。解ってらっしゃる。リスペクト。去年のエアジャムでSIMONとは初めて会ったんだ。SAMI-Tとは
2001年に1度ニューヨークで会って、同じ円卓囲んでマレーシア料理を喰ってる。そん時、俺はバックパック担いだ海外放浪中、目の前のMIGHTY CROWNは
世界チャンピオン。そりゃあギラッギラに輝いてたぜ。あれから長い時間が経った。2001年の時点では、俺もそれはここじゃないと思ってた。ここぞって時は
絶対来るって思ってたんだ。きっと俺、口数少なかったと思うよ。そしてやって来たエアジャム。だからそこでの俺等のステージをMIGHTY CROWNが観て
くれてて、ちゃんと感じ取ってくれた事は、俺にとっては11年越しだったわけよ。そっから始まったと言ってもいい今回のプロジェクト。いつもはワンマン
運転な俺もさ、「TOTAL」のレコーディング時から既にそうなりかけてたけど、人の意見も柔軟に取り入れるようになってきてて、特に今回はプロデューサー
MASTA SIMONに俺っていう素材を預けてみたかった。中々そう思わせる男はいねえ。でもそう思わせる何かがSIMONにはある。だからトラックも今まで
やってきたのとは大きく違う感じ。でも、SIMONの感性、ヴィジョンの中で俺がどう映えるのかを知りたかった。ほんと久々挑戦者の心境だったよ。だから
レコーディングも楽しかった!MASTA SIMON、SHINGO★西成、そして同じタイミングでレコーディングがあったPAPA B。この4人が同時に同じ北海道の
スタジオにいたんだ。PAPA Bったら特にここ北じゃレジェンド中のレジェンドよ。外は厳寒の大雪。でもホットな曲が出来たぜ!タイトルは「MY PEOPLE」。
とても俺1人じゃ出来ない感じ、ビートも含め、形自体もユニークで、レコーディングの場での瞬発力勝負っていうか、初期衝動爆発な曲になってます。
ヒップホップとはまた違うフィールドで、こうして挑戦する機会を与えてくれたMASTA SIMONに感謝。同じ目的に向かって切磋琢磨したSHINGO★西成に感謝。
発売詳細などは追って。お楽しみに。



ニューヨークに行ってました。ドナルドバード師が亡くなった最初の週末、DJ UGのプレイする「DOMINOES」、「LOVE HAS COME AROUND」に、地元の、
人種が見事なまでに入り交じったダンサー達と共に心を揺さぶられまくってました。共有出来るんだね、同じなんだね。無論、違いは介在しているけれど、
っていうか全部が全部違うからね。それを認め合うしかないよね。その先にあるユニティを確かに見つけている最高にファンキーな彼等、彼女等と
知り会えて、こうしてまた会えて、皆も変わらず元気で、そしていつものように音楽を間に意味深い時間を過ごさせてもらって至福でした。ふと窓際に目を
移すと、日曜のクイーンズにも朝が来てて、天気が良さそうで、でもパーティーはまだ終わっちゃいなく、夜通し体に根付いたグルーヴが、どんな音にも
反応する状態、つまりこれ以上ない良い状態、前の曲の後の拍手の後の、静寂。そしてHERBEST MOONの「BETWEEN YOU BABY AND ME」が!創ってから
何年も経て、その瞬間にいきなりかかって、場のグルーヴが変わることなく雰囲気が繋がっていく光景、その場にフィットしまくる言葉、美しくもイカレまくってる
音、音響、そして曲が終わった後、「BEAUTIFUL」と握手を求めてくる名物ダンサー、そうかと思えば「SELL OUR SOUL」は最強だっていう趣旨の想いを
ありったけの汚いスラングを使って伝えてくるデスメタルバンドの男。いつも、どこででもですが、音楽を続けてきた御褒美をもらった瞬間多々でした。

そしてマークケイミンズ師が亡くなった最初の週末、43年間続いてきたパーティーにもまた参加できました。俺自身、随分と後にそこに遅れてやってきた、
そのパーティーを構成している要素の1つに過ぎないのだけれど、そんな俺にもあの場のノリが尋常ではない事、洗濯機の中のような、メルティングなポットな
人種も性別も趣向も何もかもごった煮なダンスフロアーで、誰も誰にもぶつからずにクルクル回ったりしながら音楽を聴き踊る遊びってのは本当に、究極に
最高だぜ!って事は理解出来る。俺、今年で42歳。小学校の頃からずっと機会があれば趣味の欄には「音楽鑑賞」って書いてきた。で、途中から趣味の
「鑑賞」は「ダンス」に、そして今は「仕事」にもなってきてる。で、そんな俺よりも長く続いているパーティー。呆れるほどのパイセン達のはっちゃけっぷり。
音楽に対する知識と愛しっぷり。クラシックスや現行のテクノや音響音楽全てを楽しみ踊りこなすドファンキーさ、皆さんマジで目を奪われる程ヤバいっす。
そしてその場を支えている同じ日本人の誇り高き友人達、尊敬というか、畏敬というか、皆さんの熱情を知れた事は、俺っていう1人の、札幌に住んでいる
日本人の人生を豊かなものにしてくれています。いまいち他の国に誇れる事が少ないけど(本当はたっくさんあるんだけどね)、そんな俺にも日本人としての
誇りを感じさせてくれます。そしてその丁寧な仕事、献身、親切が結実する先がお金ではなくて、音楽、パーティー、JOYであるって所が最高に”粋”っす!
そう思ってるのは絶対に俺だけじゃない。あのパーティーの景色が黙示してる。今回も楽しませていただきました。またそこで皆さんと遊べるように頑張ります。
本当に色々とありがとうございました。



以降、ツアーレポート。今回はMC道的な意味合いも込められてます。

埼玉。4年ぶりに浦和に帰ってきた。舞台は今年で19年目という本物の老舗、BASE。しかもこの日は色んなMC達との競演。楽しみでもあったが、同時に
気合いもプレッシャーもビシビシと感じてた。今回色々仕切ってくれたTKda黒ぶち、DJ RINDの運転で羽田から一路北へ。北浦和のDISK UNIONに立ち寄る。
店内に入ると何と「STILLING,STILL DREAMING」がかかってた!ヤバっ。そのまま皿掘りながらひっさびさに通して聴いたよ。凄いね。最近色んなMCと
知り合わせてもらって、音源もらったりしてるけど、そのほとんどがファーストアルバムなわけ。人生においての世間様への挨拶状なわけだ。で、皆、本当に
スキルフルで、トピックの幅も広い。愛もあれば、狂気もトビもばっちりある。ファーストアルバムなだけに、世の中に認められない、認められたいっていう
気持ちも重々伝わってはくる。痛い程に。でもね、いっつも何かが足りないなっていうか、たまたまね、俺にとってね、そう感じる時が多くて、それって一体
何なんだろうって思っていたんだけど、あれ聴いて解ったよ。ススキノの三下のチンピラ上がりが偉そうな事なんて言えねえけど(ま、言ってるんだけど)、
今から15年前にあのアルバムを実際に創り、そしてそれが今も残り、事実頭上でかかってるからさ、そこには少しの真理もあるんだと信じて言わせてもらう。
そこが北浦和だろうが、どこであろうが、皿掘ってる手を、思考を止めさせるそれ、強制的に1対1に引きずり込んでくるそれ、それってのは「殺気」。以上。

そのまま箱へ。久々だ。入ると沢山のB-BOY達が。いつものようにPAのナオミとDYEで音作り。で、マイクチェック。問題なし。飯、焼肉。ハードな夜に
なりそうなんでしっかり喰っとく。で、本番。90分1本勝負。もちろん俺も万能じゃない。与えられた限りある場所と時間。そこを用意してくれた皆の前で
やるべき事に迷いはない。そこに、オーディエンスに、同業者に撃ち込むべきは、身の丈を上回る強がりでもハッタリでも大口でもない。そして輝ける天性の
才能でもなく、コネや運でもなく、フリースタイルバトルのチャンピオンの称号でもない。それらを持っているMC達を差し置いて、何故、今も俺等が音楽を
続けてられるのかの証。何故、飛行機に乗せてもらって、旨い焼肉を喰わせてもらって、お客が集まってくれるのかの理由。それらに他ならない。正々堂々と
やらせてもらいました。皆、そこで聴いていてくれてありがとうございました。一仕事終え楽屋に戻る。すると沢山のMC達が自分のCDを持って訪ねてきて
くれた。皆、礼を持って。こっちも礼で返す。あれには上がったね。そこには俺も知ってるフリースタイルバトルのチャンピオンも。ありがとう。光栄です。
そして皆、すぐに楽屋を出て行く。お手手繋いで仲良くとはいかねえが、それだけじゃない付き合い方ってのがヒップホップにはちゃんとあるんだ。まさに。
酒を呑み、やっと、浦和に来て初めてリラックスする。この夜はまだ終わっちゃいない。地元のMCのライブが残ってる。これを楽しみにしてた。いつもはさ、
俺等の前に全部終わっちゃって、俺等がライブ終えると、地元のDJが着陸な感じで終わっていく。それもそれで悪くはない。ありがたい。でもやっぱ地元の
音楽も感じたい。俺、自分のライブの前は一杯一杯でとても他のMCのライブを観るなんて出来ない。悪いなっていうか申し訳ないなって思ってもいる。でも
こればっかりはどうしようもねえ。親善試合しに来てるわけじゃねえから。だからこの夜は楽しみたいと思ってたんだ。DJ MICARFyのまじハンパじゃない!
プレイで既に上がっちゃってた。TKda黒ぶちのフレッシュなライブも胸を打つものがあった。その日数時間しか一緒にいなかったが、あいつの人間味が
そこにちゃんと出ていた。そして、崇勲。やっぱり、ちゃんといるとこにはいる。この街で、この界隈で、夜な夜な熟成されてきたヒップホップの片鱗を垣間見た。
そしてそれがばっちり本物だって事は札幌から来た俺にもすぐに解った。沢山の人の耳に届く事を祈ってる。祈りなど無駄だが、札幌に帰ってきた今もそう
思ってる。いいもん魅せてもらいました。もう曲も止まって、明るくなってるのに、まだカウンター付近で大騒ぎしてる浦和の愛すべきB-BOY達。俺はその
光景を過去に見た事があった。あの時代、1995年頃、札幌のGHETTOやAL'S BARで、東京っていう名の地方からやって来たラッパーを観た後、結局最後は
残った地元のいつもの面子で、ああやって大騒ぎしながら、特に根拠はないが、いつか!必ずやって来ると信じる俺等の時代を、成功を、繁栄を、ド派手に
前祝いしながら、俺も数えきれない朝を迎えていた。なんて事を思い出しながら1人宿に戻ったよ。TKda黒ぶち、埼玉ヒップホップ!最高な夜をありがとう!

高崎。過去3回はFLEEZっていう箱だった。毎回KRUSHさんを始め色んな音楽家が集合するデカイパーティーだった。ただ、今回は違う。ライブは俺等のみ。
そう、遂に俺等の全てを高崎の皆に知ってもらう時が来たってわけだ。旨いカレー喰って(榊ありがと!)、大宮から新幹線で高崎へ。30分もしなかったよ。
座って夕刊読んでたらもう着いてた。高崎といえばのBuena Vista Cafeでコーヒーいただいてリハへ。今夜の舞台はWOAL。CALMさんやHIKARUからよく
話に聞いてた。音が良い!ナオミも引き続き帯同してくれてるのでばっちりでした。本番が楽しみだ。昨日も良かったが、またこうして新しい夜が始まるぜ。
ワクワクしてたよ。まずは飯。この日は和食でした。どれ喰っても旨かったっす。とろろ入りのもつ鍋からの蕎麦で〆。前売りは完売。チケット問い合わせの
電話が飯の間もガンガンきてた。いいね〜。で、本番。なるほど、入ってるね。2月だってのにステージ付近は久々の灼熱でした。でも大丈夫。俺等がっつり
鍛え上げてるから。青のクラシックをたっぷりと織り交ぜ、果てしなく上げていく。後の方でおしゃべりに夢中のお客も軽〜くいじりながら、箱全体をまとめ
あげていく。長く険しい坂を登り切った、もっとも高い所、そう、辿り着いたエンディングの一体感はマジ素晴らしかったです。あの輝き、突き抜けてたね!
からの、せっかくのワンマンだしって事で、本編後も更に2曲程やらせてもらう。終了。約110分の長丁場。あれが今のTHA BLUE HERBの持てる全てです。
そこで聴いていてくれてありがとうございました。そこから、俺あたり、ミックスCD聴いててすっかりファンになってたIGARASHI RYOUSUKE氏のプレイを
聴きながらのアフターアワーズ。2月はここでライブが終わりって事もあって、終わってからの時間、呑んで、踊って、話してって感じでずっと楽しかった。
WOAL、噂通りの音と居心地の良さ、今度はCALMさんとDJしに行きたいな、なんてね。五十嵐君、おかげでめちゃ楽しんじゃいました。色々ありがとう!



春近し!

ILL-B